柑橘類さんのブログ

ひなろじを見たりします

思い出のニーナ:ひなろじ10話の隠れた伏線

【20170922追記】
本日ラクエンロジック公式でニーナとミカエルの出会いに関するストーリーが公開され、彼女たちの盟約は学園入学後ということが確定したため、本記事にかかれていることはほほすべてが誤りだと判明しました。大変失礼いたしました。
あらためて調べると、ニーナとミカエルの盟約時期についてはアモルのストーリー(公開は記事執筆前)で既に示唆されており、これに気づけなかったのはオタクとして恥ずかしいばかりです。
とはいえ、最終話をへてひなろじが本当に緻密に構築された作品だということはますます確かになり、ひなろじを見てくれという思いもますます強くなるばかりです。ひなろじをよろしくお願いします。
【追記終わり】

 現在絶賛放送中のジュブナイルSF学園日常魔法少女アニメ『ひなろじ 〜from luck & logic〜』をみなさんはもちろんチェックしていますね!? 先日放送された10話は、ちょっと見ただけでも涙を誘い、1話から9話まで積み重ねられてきた様々な描写を踏まえて視聴すると感動が何倍にもなる素晴らしい回でした。そうした要素の中から、この記事では比較的気づかれにくいと思われる一点を紹介したいと思います。

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 まずは10話で鍵となる人物たち、主人公のリオンとクラスメイトのニーナの関係を確認しておきましょう。ニーナは異世界からの使者と合体してこの世界を守るために戦う「定理者」(ロジカリスト)として幼いころから戦ってきた女の子です。彼女の活躍はテレビでも放送されおり、幼少期のリオンもそれを見てニーナに強いあこがれを抱いていました。その様子は1話で回想されています。
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 この全然目立たない短い回想で実は重要なのが、テレビでニーナの活躍を見たリオンが思わず「フェンシングの動作」をとっている点です。おそらくテレビのなかのニーナを真似したのでしょう。ここから、直接はみえないもののテレビの中のニーナはフルーレで戦っているのだろうと察することができます。実際、これはニーナが使者「ミカエル」と合体することで得る能力です。
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 その後、リオンはテレビの向こう側の存在だったニーナと実際に出会うことになります。リオンにも「定理者」の才能があり、2人は同じ定理者の学園に通うことになるのです。これが物語の開始時点となります。
 ところが、本編開始時点以降ニーナが主に合体するのは使者「アモル」、弓を武器とする使者です。
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ニーナが複数の使者と合体できることは2話でも言われますが、実際にミカエルと合体するシーンは7話と8話に少しあるだけで、視聴者側にはニーナとミカエルの合体はそこまで印象に残りません。視聴者にとっては、ニーナと言えばアモルと合体して弓で戦う少女です。キービジュアルでもニーナはアモルと合体しています。しかしながら、リオンの思い出のなかのニーナは、ミカエルと合体してフルーレで戦う少女なのです。

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 この点を踏まえて10話に入りましょう。冒頭、何気ない冬の一コマとして、友人達と雪合戦をするリオンの様子が映されています。その中でリオンはニーナに対し、「武器とって」とやや唐突なお願いをします。ニーナは一瞬「武器?」と戸惑いますが、すぐにその「武器」とは「ツララ」のことだと察して、ツララをリオンに落としてあげます。これは一見なんでもないシーンですが、ツララを受け取ったリオンの台詞が重要です。「我の力、存分に使うが良い」。
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これはニーナと合体する際のミカエルの口上の口真似です(7話参照)。つまりここでリオンは、単にツララは鋭利だから武器になると考えていたのではなくて、「ツララはニーナの武器であるフルーレに似ている」と考えてニーナに「武器とって」と言ったのです。このエピソードは、リオンの中でのニーナとミカエルの結びつきを改めて強調するものだと言えます。

 それにしても、これまで特に目立っていなかったミカエルの口上がいきなりリオンの口から出てくるこの冒頭場面はいかにも唐突で意味深です。そこで10話の続きをミカエルに注目しながら見てみましょう。

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 学園の実技試験として、リオンとニーナは戦闘をすることになります。戦闘の最中、ニーナはリオンがこれまで実力を隠して舐めプしていたのではないかと勘違いし激昂します。そしてリオンに対してかなり敵意をむき出しに襲いかかってきます。そのシーンがこれです。
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完全に殺す気です。すぐにわかる通り、ここでニーナはミカエルと合体しています。元々戦闘開始時にはニーナはアモルと合体していました。しかし激昂を境に合体相手をミカエルに変え(「トランスチェンジ」)、弓からフルーレに持ちかえてリオンに襲いかかってくるのです。

 このシーンはニーナの視点から見れば、弓という間接的手段ではなく剣というより直接的な手段でリオンを攻撃しようというところから、怒りの強さがにじみ出てくるシーンだと言えるでしょう。

 しかしリオンの視点から見ればどうでしょうか。リオンが実力を隠していたというのは完全にニーナの誤解で、ニーナの怒りにリオンはかなり戸惑っています。理由も全くわからないまま、かつて自分が憧れたテレビの中のヒーローが*1、そのテレビに映っていたそのままの姿で、今度はその切っ先を自分に向けているのです。リオンがどれほどニーナに憧れ慕ってきたか、学園でニーナと友達になれたことをどれだけ喜んできたかを考えれば、この状況がリオンにとっていかに辛いものであったかは察して余りあります。

 そしてついに、隠しごとをするのは「友達じゃない」という決定的な一言がニーナから発せられます。このときももちろん、ニーナはミカエルと合体しています。
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この発言に大きなショックを受けたリオンはその人格が心の奥に引っ込んでしまい、廃人に近い状態になってしまうのでした。

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 自身の発言を悔いたニーナは、リオンを助けに雪山へと向かいます。リオンを守る薔薇の枝を薙ぎ払うために、リオンはトランスチェンジを繰り返していきます。
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 しかしついにリオンに近づき手を伸ばすとき、やはりニーナはミカエルと合体しています
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 そしてニーナの思いが通じリオンが目覚める時、そこに見たのはやはりあのときテレビでみたままの姿のニーナなのでした。
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 『ひなろじ』10話では、「リオンを追いつめる」・「リオンを助ける」という2つの決定的なシーンで、ニーナが常にミカエルと合体しています。リオンとニーナが本気で向かいあうこの2つのシーンで、リオンが幼い頃からずっと憧れてきたそのままの姿のニーナが選ばれたのです。このことは、2人のすれ違いと再会を何倍も劇的なものにしてくれるのではないでしょうか。

 しかしもしかすると、2シーンでニーナがミカエルと合体しているのは単なる偶然なのかもしれません。私自身は、冒頭でやや唐突にミカエルが言及されていること、そしてどちらのシーンでもアモルとの合体からわざわざミカエルとの合体に切り替えていることから、これは偶然ではないと考えています。しかしそれ以上に、これが偶然ではないと思うのは、『ひなろじ』は全篇に亘ってこうした細かな描写に何度も何度も重要な意味を与えつづけているという信頼感があるからです。ここまで読んでくださったみなさんにも、『ひなろじ』を何度も見返してそうした小さな意味の積み重ねを見つけ出し、私にもこっそり教えて欲しいなと思っています。

 さてそこで欠かせないのがもちろんブルーレイです! 『ひなろじ』のブルーレイはなんと上下巻でたったの15,000円! もう一度言います15,000円! 本編12話はもちろん、キャストのオーディオコメンタリーや「ラクエンロジック」のカードまでついてきます! さらに各店舗ごとの限定版にはめちゃくちゃかわいいB2ポスターまで! これはもう買うしかないですね・・・ひなろじを見てくれ・・・頼む・・・

*1:そう、アニメ「ラクエンロジック」第一話を視聴したことがある人ならわかるように、定理者というのは「英雄」なのです