【ひなろじ見所探訪】宇宙とひなろじ
本日2017年11月24日は、今夏惜しまれつつも最終回を迎えたハイパー名作アニメーション『ひなろじ ~from Luck & Logic~』のBlu-ray上巻の発売日です! おめでとうひなろじ!! ありがとうひなろじ!!!
私のもとにはまだ現物が届いておらず鬱病になりそうですが、『ひなろじ』を見れば鬱病はなおるのでそれはいいとして、これからの無限ひなろじ再生ライフをより楽しむために、劇中の細かいこだわり描写を改めてまとめていきたいなと考えています。今回は「宇宙」をテーマに見て行きましょう。
🐤「星空に見る夢」
はじめに少し『ひなろじ』前夜の話をさせてください。
『ひなろじ』で「宇宙」とくれば、もちろん宇宙大好き少女ニーナちゃんです。ニーナは『ひなろじ』で初登場したキャラクターではなく、『ひなろじ』の1年ほど前にTCG「ラクエンロジック」で初登場していました(2016年6月の第3弾ブースター「Spirit & Signal」から追加)。この初期のカードの設定は、『ひなろじ』のニーナちゃんにも大きく受け継がれているのですが、その1つがまさに「宇宙大好き」という設定なのです*1。こちらのカードをご覧下さい。
カード名は「星空に見る夢」、テキストには「星の世界は、どこまで広がっていくんでしょう?」とあります。
本に囲まれた部屋で星を眺めながら宇宙へと思いを馳せるニーナちゃん……『ひなろじ』でも描かれていた姿が、すでにはっきりと描かれているのがわかります。
これまで戦闘が運命付けられていた定理者のひなたちが、どこまでも広がる自由な世界へ、あるいは焦がれあるいは恐れながらも羽ばたこうとする、そんな『ひなろじ』の基本テーマが既に先取りされていたかのような、素敵な一枚です。
🐤ニーナちゃんの読んでいる本
さて本編に入りましょう。『ひなろじ』本編で宇宙といえば、みんなで星空を眺めた6話が最初に思い浮かぶと思います。ですが既に第1話、本編開始後ほんの数分の間に、さりげなく宇宙要素が顔を出してきます。それが、冒頭でニーナちゃんが読んでいる本です。
本のタイトルにロシア語で「Космическая техника」とあります。これは英訳すれば「Space technology」、つまり「宇宙技術」の本なのです。ニーナちゃんは純粋な天文学に興味があるだけでなく、技術的な関心もかなりあるようですね。この本はこの後も本編各所で登場するので要チェックです。
🐤アレシボ・メッセージ
しばらく宇宙要素がないまま本編は進みますが、次に見逃せない宇宙要素は4話にあります。この話は夕子さんの誕生パーティを開く回で、一見宇宙とは何の関係もありません(宇宙人は出てきますが……)。ですが、パーティの開催場所を相談している最中、リオン&万博の部屋がこれまでになかった角度で映ります。
ここで丸をつけた部分に注目してください。ちょっとわかりにくいですが、何やら不思議な模様の絵がかけてあるのがわかるとおもいます。
少し先回りして、同じ絵がもうすこしアップで写っている8話のカットも見てみましょう。
この模様、見覚えがある人もいるのではないでしょうか。実はこれは「アレシボ・メッセージ」と呼ばれるメッセージを画像化したものです。
「アレシボ・メッセージ」とは、1974年、人類が初めて地球外生命体に対して電波で送信したメッセージで、原子やDNAなどの情報が込められています。
人類が初めて地球外生命体に送ったメッセージ。それは、「異世界に行きたい」という強い願いを持つ万博をいつも励ましていることでしょう。研究で行き詰まった万博ちゃんがアレシボメッセージを見上げて気持ちを新たにする様子が目に見えるようですね・・・
🐤月を眺めるベル
5話に進みます。多くの人を惹き付けてやまない『ひなろじ』Cパートですが、5話のCパートにはその他のCパートとはひと味違う部分があります。
Cパートといえば、大人たちがお酒を飲みながらダメな会話をし、最後にベルが鼻で笑いとばすのがテンプレです。しかし、5話だけはベルのリアクションが無いのです。5話のベルは、無言で満月をじっと見つめ続けています。
この意味深なシーンについては、私の中でまだ解釈が定まっていません。テトラヘブンからの使者には基本的にモチーフがあり、ベルは恐らくカーバンクルなのだと思うのですが、カーバンクと月に特別な関係があるという話は聞いたことがありません。ただ単に満月の綺麗さに見とれていたのか、あるいは月を見て故郷テトラヘブンに思いを馳せていたのか、もしかして次の6話で夜空が大きな役割を果たすことの伏線になっていたのか……なにか良い解釈があったら教えてください。(あれから5年経って、ベルのモデルはベルザンディだということが明かされました。ベルザンディと月にも深い関係は無いようなので、ここはやはり満月の綺麗さに目を奪われていたと解釈するのが妥当でしょうか(2023年2月追記))
🐤「週刊すかいわっちゃー」
さて6話です。まずは冒頭ニーナちゃんが熱すぎて寝ているシーンに注目です。
『週刊すかいわっちゃー』なる天文雑誌を抱えています。これは1983年から2000年まで発行された月刊の天文雑誌『スカイウォッチャー』へのオマージュです。
なお表紙に「夏休みは親子で天体観測」という煽り文が見えますが、この付近のシーンで両親とあまり会えないと告白していたニーナちゃんがこの雑誌をどういう気持ちで読んだのか、想像はつきません・・・
🐤星形に開ける森
ニーナから流星群の到来を聞いた6人は、星を見に森の開けた場所に移動します。この移動のカットですが、カメラは天に向けられていて、6人が進むほどに森が開けて星空が見えるようになっています。
ところでこの森の開け方、星形に見えませんか?
これはオタク特有の読み込みすぎの可能性も高いのですが、「森を星形に開く」ことで「森が開けて星が見えるようになる」ことの導入としているのではないか、と怪しんでいます。
🐤7つの流れ星
万博ちゃんが「異世界に行きたいっす!」と告白したあと、再び星空が写されます。このカットをgifで見てみます。
カメラが下がっていくなかで、流れ星が7つ流れます。
「ひなろじ」において「7」は重要な数字です。メインキャラクターの数が7人だからです(1話冒頭の農道シーンにも、7匹のひなどりが映っています)。この7つの流れ星は、ひなたち一人一人とその願いを表しているのではないでしょうか? もちろんこの場にいるのは6人なのですが、夕子さんも続く7話で同じ星空のした夢について議論しているのでした。
🐤セファイド型変光星までの距離
続いて8話に行きましょう。まずはニーナちゃんの自由研究紹介シーンです。
このシーンに登場する数式ですが、「M=0.1+3.0 Log t」と「M=-1.371-2.986 Log t」はそれぞれ実際にセファイド型変光星の種族IIとIについてその変光周期tから絶対等級Mを求める式、「LogD=0.2(m-M)+1」はMと実視等級mからその星と地球との距離Dを求める式となっています。
🐤覗けない望遠鏡
8話でさらに重要なのがこのシーンです。
万博ちゃんが夢を語った満天の星空。しかしニーナは、天文台にいるにもかかわらず、その星空を見ることができません。ALCAに戻りたいと過去に固執し、本当は宇宙のように開かれているはずの自分の未来と向き合えない、そんなニーナの姿が夜空との向き合い方によって象徴的に表現されています。このシーンは12話と対比になるとても重要なシーンです。
🐤万博のプラネタリウム
9話と10話にはあまり宇宙的要素はなく、ピラリ学園は冬休みに突入します。ここで少し本編から離れて、是非言及したいグッズがあります。それが「ひなろじ soloete」です。soloeteはQRコードつきのキャラキーホルダーで、QRコードを2つ読み取ることで読み取ったキャラ同士の会話が聞ける(しかもA→BとB→Aで異なる会話が聞ける)という掛け算お姉さんお兄さんに激ササリのアイテムです。
「ひなろじsoloete」では本編10話から11話のあいだのエピソードがたくさん聞けるのですが、ここで取り上げたいのが「万博×ニーナ」のエピソードです。このエピソードは、万博がプラネタリウムを開発してそれをニーナと2人で眺めるというもので、宇宙好きという共通点がありながらあまり2人きりにはならなかったニーナと万博の会話が聞ける貴重なエピソードになっています。本編に描かれなかっただけで、この2人はきっと宇宙に関する話を色々していたんだろうなーと思うと心が温まりますね。
🐤オリオン大星雲
本編に戻って11話に進むと、ニーナは天文台でリオンとの仲をさらに深めます(意味深)
そして12話。8話とは違い、ついにニーナちゃんは星空と向かい合うことができました。1人ではなく、大切な友達といっしょなら。
2人が覗いた望遠鏡から見える景色はこう
これはオリオン大星雲です。
形をみればすぐわかるように、オリオン大星雲は「鳥が羽ばたく形」をしていることでよく知られています。ひな定理者たちは、宇宙の向こうに未来の自分自身の姿を見たのです。しかしその鳥がどこに向かって羽ばたいて行くのか、それはまだわかりません。何にだってなっていいのは難しいからです。ただ、ひなたちの目の前にある可能性が宇宙のように無限に広いということだけは確かなのです。
🐤OPとキャラソン(11/29追記)
このようにひなろじ本編では、特にニーナちゃんに関して、未来の可能性と宇宙が丁寧に重ねられています。この点を踏まえると、ニーナちゃんのキャラソン『やわからな明日』の歌詞「遠い遠い星を見て憧れたのに/そこへ行こうって思わずにいたから」の意味も非常に深くなってくると思います。
また改めて振り返ってみれば、そもそもOPの「BUTTERFLY EFFECTOR」の時点で既に心が「無重力状態」になっており、やっぱりひなろじは宇宙なんですね。心がぴょんぴょんしてるようじゃ甘いよ、心を無重力状態にしろ。
まとめ
以上が『ひなろじ』の主な宇宙要素です。こうして見ると「宇宙」というのは『ひなろじ』の物語に深く食い込んでくる重要な要素だと改めて思わされます。今回は画面を中心に紹介してきましたが、「異世界」と「宇宙」を重ねる物語のつくりかたを含め、ひなろじ宇宙部が読み解くべき事柄はまだまだたくさん残っていると感じます。ともあれ、無限に広がる美しい星空を高画質のBlu-rayでひな定理者たちと一緒にながめて楽しんでみてはいかがでしょうか。soloeteも揃えてみるといいかもしれません。『ベィビィバード!〜ガクエンロジック〜』も聞いて。ひなろじをよろしくお願いします。
それでは、次回ひなろじ見所探訪「北海道」篇でお会いしましょう。